ああ知らなんだこんな世界史 (朝日文庫)
清水義範
最近手に取ることが多くなった世界史関連本。「やっぱり世界史ぐらい知らないと、海外で人と話せないよな」と一人勝手に思い始めてきたので。
ということで世界史関連本の本書「ああ知らなんだこんな世界史」。
いきなりですが、このタイトルは好きになれませんでした。タイトルを見た瞬間に、「雑学本かな?」と。「知らなんだ」の文字がどうしても、「(これを読めば)知ることができる」といったニュアンスで目に入ってきました。そのため、最初は本書の脇を素通りです。
では、なぜ本書を思わず手にとってしまったかというと、著者が作家清水義範氏となっていたからです。氏の作品といえば、いつも軽快なタッチで描かれているので、本書もそのノリかな?と少し期待した次第です。
実際、そのような筆致で進むので、気づかぬうちに、作品世界にどんどん入りこんでいってしまいます。
ところで本書は、世界史をヨーロッパ中心ではなく、イスラム圏中心に描きます。伝統的なヨーロッパ中心の歴史観では大事なものが見落とされてしまうと思ったことが、本書の執筆動機となったようです。
実際、ヨーロッパ史では必ず出てくるようなナポレオンや、ルネサンスといった文言は本書に全く出てきません。
最近、アンチヨーロッパ史観というのが流行っているのでしょうか?「遊牧民から見た世界史 増補版」も同様の本かと思うのですが、どの書店にも並んでいたような記憶があります。
ここで私の独断と偏見を交えると、「世界史=ヨーロッパ史」としているのは、日本国内だけに思えて仕方ありません。例えば、「若い読者のための世界史(上)(下)」など読むと、イスラム圏についても多く語られており驚かされます。
それにしても、史の筆致は軽快でグングンと作品世界に呼びこまれていきます。軽快な筆致とイスラム史観という新しい視点の本書。面白かったです。
最後に、下記目次です。いわゆるイスラム諸国ばかりで、西欧諸国が全く触れられていないことを、分かってもらえると思います。
目 次 第一章 トルコでトルコ以前を知るエデンの園はどこに/アルメニア人に出会った/教会からモスクに変わったアヤ・ソフィア/そこはイオニアだった/小アジアと呼ぶわけ/ヒッタイトは鉄の国/キリスト教の誕生期/コンゲマネ王国の奇観 第二章 ギリシアと中近東の意味 古代ギリシアの栄え/ギリシアに見るトルコの影響/ギリシア文明の価値/パルミラと幻の女王/ペトラとナバテア人/オアシスの古都 ダマスカス/フェニキア人の発明品 第三章 エジプトの栄え ピラミッドの時代/ナイル川の賜物/新王国時代の都 テーベ/イクナートンの宗教改革/プトレマイオス朝のクレオパトラ/イスラムの都 カイロ/十字軍と戦ったサラディン 第四章 イランとイラクに花開いた文明 ペルシアとイランの違い/ゾロアスター教の発祥地/幻の都ペルセポリス/キュロス大王の墓/イスファハーンの賑い/シーア派とは何か/退廃と繁栄のバビロン/円形の計画都市 バグダット 第五章 中央アジアからインドまで チムールの都 サマルカンド/モンゴルが中央アジアに来襲した/シルクロードとブハラ/マムルークは奴隷なのか/バーブルはインドをめざした/捨てられた都 ファテープル・シクリー/幻想のタージ・マハル/反骨の王 ティプー・スルタン 第六章 北アフリカの地中海世界 名将ハンニバルの行軍/ベルベル人とは何か/ヴァンダル族とは何か/メディナとカスバがモロッコの味わい/ミナレットのいろいろ 第七章 スペインの歴史アラベスク 宗教会議の国 西ゴート王国/学問が栄えた 後ウマイヤ朝/レコンキスタとエル・シド/メスキータに悲しみを見る/アルハンブラ宮殿の亡びの美/モーロ人とは何か |
ああ知らなんだこんな世界史 (朝日文庫)
清水義範
by G-Tools
0 件のコメント:
コメントを投稿