日本企業がなぜ中国に敗れるのか (新潮OH!文庫)
莫 邦富
少し古い、2002年出版の本。
ベトナムでは、10年から20年前に中国で起こったことが、今起こることも珍しくない。ということで、ベトナム商売の参考にしようと本書を手に取ってみた。
本書のタイトルは「日本企業がなぜ中国に敗れるのか」とある。しかし、本書の内容を正確に表現するなら、「なぜ、中国企業は日本企業に勝てたのか」とする必要があると思う。本書は日本企業の敗因よりも、中国企業の勝因について、より多く語っているので。
そもそも、中国企業の勝因は何か。本書は1980年代当時のハイアールなど、中国国営企業数社の事例を基に、その勝因を挙げていく。概ね以下がその理由だ。
- 信賞必罰を徹底した
- 若者を積極採用した
- 留学組を始め、海外中国人人材を積極活用した
だが、今の中国企業のトップたちは、ここからスタートして結果を残してきた。彼らの手腕は素直に見習う必要がある。
ところで「中国企業の勝因」よりも、看過できないテーマが本書には隠れている。日本企業が中国国内でサービス面で負けたとする部分だ。実際、中国国内で、日本企業は中国に負けている。
従来サービスは日本企業の十八番だった。中国と日本を比較して、中国企業が日本企業より優っていることを認める日本人は少ないはずだ。これは恐らく、他国の人が同じように日本と中国企業のサービスを比較しても、同様の答えが返ってくると思う。
しかし、本書は違う。1996年以降を境に中国企業が日本企業をサービス面でも上回ったと指摘する。より、正確にいえば、現地のニーズを踏まえた商品開発と、アフターサービスで、多くの日系企業が中国企業より劣ってしまったと指摘する。
実際、これらが徹底していなかったために、日本企業の白物家電やDVDの中国国内市場占有率は1ケタ台だったようだ。ちなみに、韓国企業も中国市場から撤退を発表した。中国白物家電市場で苦戦しているのは日系企業だけではないようだ。しかし、マーケティング力やアフターサービスで、不十分だったことは変わりがなさそうだ。
現地のニーズを踏まえた商品開発やサービス面の取り組みは、多くの担当者の頭を悩ませている。そこに、企業や国の違いはなさそうだ。
だが、中国と日本企業を比較して本書が見落としている点が1つある。「しがらみ」のある・なしだ。
日本企業・市場はしがらみが多く、中国企業・市場はしがらみが少ないのではないだろうか?
例えば、日本企業は「売り手よし」、「買い手よし」そして「世間よし」の3方よし、の近江商法だ。しかし、今やその「売り手」があまりにも複雑化しているのではないだろうか?
例えば、携帯電話市場。売り手が携帯製造メーカー、通信キャリアと量販店…。一昔前の「3方よし」が、今や「4方よし」や「5方よし」となっている。これでは、企業が消費者に向き合うこともできないだろうし、中国企業にも対抗できない。
本書のタイトル「日本企業はなぜ中国に敗れるのか」。本書は、中国式経営の勝因と、日本企業の怠慢を日本の敗因として挙げている。
中国の勝因はその通りなのだと思う。そして、ベトナムでも当時の中国と同様の企業を見かけることも珍しくない。しかし、本書が指摘するように中国での敗因が日本企業の商品開発力の低下やサービス面の欠如にあるとは思えない。また、現在の在ベトナムの日系企業にも、これらは当てはまらないとも思う。
むしろ、もっと根深い問題があるのではないだろうか?「しがらみ」という、これまでは助け合う仕組みだったものが、海外との接点が増えることで、むしろ日本企業は自由に動けなくなっている。ここに、秘密があるのではないだろうか?
ところで、本書は中国企業が勝ったという位置づけだ。本書の出版から10年を経った今でも、その現象は変わらない。しかし、次の10年も同じように進むかは疑問だ。
日本企業がなぜ中国に敗れるのか (新潮OH!文庫)
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