「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力
安西洋之 中林鉄太郎
久しぶりの良書。
日本企業の海外進出が仕事の大きなテーマとなっている僕にとって、何度も読み返す必要ありと思った一冊。
ただ、マルちゃんが如何にメキシコで売られたかという話”だけ”でははない。タイトルに騙されちゃダメ。
「グローバルはローカルの集まりだ。」これは本書、一番最初の言葉。この一行が本書の全てを物語っている。ローカル・コンテクストに如何に落とし込んでいくか。これが本書のテーマになっている。
本書がこれまでの日本企業海外展開に関する本と異なる点は2つある。そして、この2つが本書を他書と比較して秀逸と思わせるポイント。
一つは、本書がアカデミック・アカデミックしていないこと。いわゆる研究論文や経営論の教科書と異なり、細かな統計データや過去の研究の論点整理など本書の中に一切ない。本書にあるのは、産業デザイナーとして日本企業の海外展開に係わる著者が、その経験や体験をベースに行う海外展開論だ。
かといって、「根性論」や「カリスマ論」といった主観論とも一線を画す。またデザイナーなのに、「五感」の重要性を解くわけではない。プロジェクトXや他の企業成功物語にある、汗や涙の感動秘話は本書に一切出てこない。こらが2つ目。
言いかえれば、本書は「『経営論の教科書』と『プロジェクトX』のような成功物語本のちょうど中間にあたる書といっていい。
「感覚」よりも「論理」、個人の「カリスマ」よりも「仕組み」の抽出。だが、それはあくまでも実践的に。これが本書全体から伝わるメッセージだ。
この本書が掲げる海外展開の「仕組み」は「ローカリゼーションマップ」として本書内で紹介されている。その詳細は本書に譲るが、簡単に図式化すると、以下のとおり。
上の図は、本書より引用した。
「製品文化」の各事象は以下のようになる。
- ①:グローバル市場かつ商品コンテクストが弱い商品⇒グローバル商品
- ②:グローバル市場かつコンテクストが強い商品⇒ブランド商品
- ③:ローカル市場かつコンテクストが強いもの⇒例えば白物家電
- ④:ローカル市場かつコンテクストが弱いもの⇒例えば調理器具
ローカリゼーションマップは、「地域文化」と「商品文化」を複眼的に行き来させる必要がある。また、何度もそのマップをアップデートさせる必要がある。
その土地にあったロジックに商品コンテクストを如何に落とし込めるか?その手助けをするためのツールだ。
ところで、本書のタイトルは紛らわしい。かつての「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 」と同じだ。書籍内のキャッチーなテーマをそのままタイトルとして使用している。紛らわしい。商品マーケティング論を語る書として、どうなんだろう。
なお、本書は「マルちゃん」を含め、以下を国際展開の成功事例として分析している。
- キッコーマンの醤油
- カップヌードルのマルちゃん
- パナソニックの欧州白物家電
- TOTOのトイレ便器とウォシュレット
- 公文式学習法
- ソニーエリクソンとスマートフォン
- 村上隆のデザイン
- フランス料理人 松嶋啓介
本書は、今後海外展開を考える企業や個人には、指針となる一冊だと思う。
「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力
安西洋之 中林鉄太郎
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