2012年7月17日火曜日
好調な理由:経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件
経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)
佐藤 百合
日系企業がアジア進出を検討する際、最後の2択として残る国、インドネシア。進出するなら、インドネシアにするか、ベトナムにするかと。
でも、なんでインドネシアなんだろう?
ベトナムにいると、インドネシアという国は日系企業の進出先獲得競争の最大のライバル国に見えてくる。
最近話題のミャンマーは、政情不安でまだ未知数の部分が多い。タイとマレーシアは既に成熟してしまって、参入できる余地がない。一方、ラオスとカンボジアはまだ早い。そうなると、残っているのはベトナムかインドネシア。こんな心理が企業側に働いているのかもしれない。
また、インドネシアは一度経済発展に失敗した国という印象を僕は持っている。シンガポール、タイやマレーシアといった国々と経済成長を続けていたのに、これら3国には経済レベルでは遅れを取ってしまったという印象だ。
ということで、なぜに、今インドネシアは注目を集めるのか。そして、一度失敗した国の再浮上のきっかけは何だったのか。そんなことを知りたくて本書を手に取ってみた。
本書から見えるインドネシアが注目を集める理由は、インドネシア経済の将来性に対する高い期待感とその実現可能性が高いと判断されていることにあると思う。
これまでは、本書にもあるが、同国経済の構造は滅茶苦茶になりかけていた。ワイロの横行や大統領ファミリービジネス構造など。しかし、2004年のユドヨノ大統領の誕生が、同国経済構造の改革に繋がる。ワイロの一掃やファミリービジネスの解体を推し進め、大きな変化が同国内にいても肌で感じることができるほどの変化をもたらしたようだ。
ところで、大前研一氏も著書「お金の流れが変わった! (PHP新書)」で同様の主張をしている。同大統領の出現が同国の近年の反映をもたらしたと。
ここで穿った見方をすると、同国の専門家でもない大前氏が同様の主張をしているということは、同氏が取材した関係者の多くも同様の見解を抱いていることが類推される。そのため、ユドヨノ大統領出現によるインドネシア経済再浮上説は関係者内で最有力な見解なのかもしれない。
現大統領ユドヨノ氏の存在以外に、本書が指摘する、高い経済成長が期待される理由は他に2つある。一つは、いわゆるバークレー・マフィアと呼ばれる、米国UCバークレー校留学組を中心とした若手テクノクラート(技術官僚兼研究者)の抜擢と活躍。そして2つ目は人口ボーナスだ。(人口ボーナスは「老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき 」に詳しい)。
どちらの理由も、本書では深く納得させられる。その豊富な情報と根拠は本書に譲るが、数々の情報が筆者が長年同国の研究に携わってきたことが伺える、貴重な資料と情報により展開されていく。
本書はインドネシアとベトナムの比較という点で、予期せぬ一面を浮き彫りにしたと思う。それは、蓄積情報量の差だ。
インドネシアについては、筆者の長年の研究実績もあるが、日本国内に日本語での資料が豊富にあるのではないだろうか?逆に言うと、ベトナムについて、同書と類似する情報量の著作を手にすることができるのだろうか?
インドネシア進出のアドバンテージとして、日本語情報量が豊富という点を加えてもいいのかもしれない。
経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)
佐藤 百合
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