SankeiBiz(電子版)の2月8日「手袋のスワニー、新工場稼働 カンボジア 村回りワーカー確保」との記事があってので、ご紹介。
将来、こんな形も出てくるかもと思ったので。
この記事は、香川県の手袋製造大手スワニー社がカンボジアで工場を2012年2月に稼働するという記事。一見、よくある海外進出ニュースです。
ただ、「面白い」という部分は同社の進出した先。カンボジア側のベトナムとの国境の街バベット(Bavet)になります。バベットは約900Kmで「タイーカンボジアーベトナム」を結ぶ南部経済回廊(または「第2東西経済回廊」)上にあり、ベトナム側国境の街モクバイと合わせて、密かな注目を集めています。(南部経済回廊の様子は「第2東西経済回廊:起こるかメコンデルタの奇跡」に詳しくあります。)
この国境の街モクバイからベトナムのホーチミン市へは約65Km程度で、約2時間程度の移動距離です。ホーチミン市から同程度の移動距離には、ドンナイ省のニョンチャックⅢやビンズオン省のミーフック工業団地などがあり、日系企業が多数進出する工業団地として有名です。
参考までに、ベトナム側国境の街モックバイにはモックバイ経済特区があります。同特区には100円ショップのダイソーが工場を持っています。
ということで、ホーチミン市から北へ移動するらならドンナイ省やビンズオン省の有名工業団地。一方、西へ移動すればカンボジア国境の街です。同じ程度の移動距離なら、カンボジア国境モクバイへの進出を考える日系企業も出てくるのでは?と思ってしまいます。
目下、ベトナム進出の課題は急騰する物価と人件費、そして労働者不足です。一方、この記事によると、カンボジアの国境の街バベットにはまだ多くの労働者が職を探しているようです。ただ、病院や学校がなく、日本人駐在員が生活できる環境にない。また、中間管理層がベトナム以上に不足ぎみといったあたりが課題として想像できます。
それなら、カンボジアまで日本人とベトナム人中間管理職層がホーチミン市から通勤する。そして、バベット近郊に住む労働者を採用すれば問題はかなり解決してしまうのでは?といった考えが頭に浮かびました。
実際、国境をまたいで通勤することは日常にあるようです。僕の知っている限りでは、チェコやハンガリーに進出する日系企業では、近隣諸国から毎日通勤してくる従業員がいます。また、アメリカとメキシコの国境には通勤ラッシュアワーがあると聞いたことがあります。
おまけに、カンボジアとタイの間では既に毎日通勤する人が多いようです(「カンボジア経済ーポイペト国境」より)。タイとカンボジアで既にそのような動きがあるなら、ベトナムとカンボジアも同じような動きが出てきてもおかしくありません。
島国で育った僕には外国へ行くことは大イベントでした。しかし、国境が地続きの大陸で生活を始めると、国境をまたぐことは高速道路の料金所を通過するような感覚になってきます。財布の中の紙幣とパスポートを見せるか見せないかの違いだけのような感覚です。
こと、カンボジアとベトナム間の国境をまたぐ通勤には色々な問題が出てくるかとは思います。所得税をどうするとか、ビザや就労許可書の問題など…。
また、カンボジア進出を検討した会社が同国進出を諦めた理由は「識字率」を上げる企業が多いです。どうしても、ポルポト政権時代に「眼鏡をかけている」と言うだけで、反抗インテリ分子として多くのカンボジア人が虐殺されました。悲しい歴史の傷をまだ負っているようで、寂しい限りですが。
ただ、2015年のASEAN統合により人の行き来はより自由になると言われています。もしかしたら、その頃はこぞって日系企業がこのバベットへ進出するなんてことが起こったりして。
参考までに、同記事のカンボジアへ進出したスワニー社は「タイ・センバベット工業団地」へ進出したようです。同工業団地のサイトにはカンボジアの首都プノンペンやシハヌークビル港へのアクセスが一切触れられていません。ベトナムの都市ホーチミンへのアクセスの良さだけが強調されています。さらに、日本語完備。完全にベトナム進出を検討する日系企業に標準を定めているようです。
これは、完全に盲点を突かれた進出ニュースでした。
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