2012年2月7日火曜日

ベトナム人を論破できるか?:【書評】京大式ロジカルシンキング―頭スッキリ!行動派のための論理思考法


京大式ロジカルシンキング―頭スッキリ!行動派のための論理思考法 (サンマーク文庫 B- 111)
逢沢 明
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「悪いのはベトナムのシステムで、自分じゃない」。「ここは日本ではないから、日本式を持ち込まれても」。
ベトナムにいると頻繁に聞く言葉です。一緒に働く職場の仲間から、取引先のベトナム企業から。そして、時には自分自身も使ってたり。


ベトナムで仕事をしていて苦しめられるもの。いくつかある一つに、決して非を認めない人々とのやり取りがあります。何が起こっても、「自分ではなく、社会が悪い」とか、「日本とベトナムの文化の違いだ」とか。何とも”言い訳”じみた言葉の数々に、時々辟易してしまうことがあります。
本書を手にしたのは、上のような”言い訳”じみた言葉の数々を何とか切り返して、ベトナム人を論破したいから。そのヒントが欲しかったのです。
さらには、タイトルにあるとおり、「東大式」ではなく「京大式」だから。ロジカルシンキングに「東大式」と「京大式」があるのかは知りません。ただ、多くの京大OBが一匹オオカミとして世界で活躍しているといった、勝手なイメージを持っています。だから海外で使うなら「京大式」なのかなと。

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ところで、京大式とは何か?その答えは、本書の「まえがき」で簡潔に説明されています。
本書では、この「コンピュータ論理」を京都学派の伝統と緊密に結びつけました。そして、フィールドワーク型で「実践」重視である川喜田二郎氏の「KJ法」や、梅棹忠夫氏の「京大式カード」にヒントを得て、創造的でより分かりやすい形に、現代論理学を再構成しました。京大式の「創造力」や「戦略力」を徹底的にスキルアップして頂けると思います。(本書 p.4「まえがき」より)
この「まえがき」の段階から僕の本書に対する期待値はMAXです。「『創造力』や『戦略力』を徹底的にスキルアップ」といった、表現。必ずや、ベトナム人の”言い訳”じみた言葉を論破する術を得られるだろうと。
そして、一番期待した部分は本書の第4章、「1.道理が通らない相手への対処いろいろ」です。この章のタイトルから連想するに、まさに今の僕が手に入れたい対処法がありそうです。必ずや道理が通らないベトナム人を論破してやる!と。
ここで気になる本書の第4章で紹介された対処法は、以下の4つです。
  • 噛んで含めるように説得する。決して腹を立ててはいけない
  • ゼロポイントを基準にして、現在どの状態にあるのか毎回明確にせよ
  • 相手の道理を推測して、説得を試みよ
  • 30分だけがまんしなさい。
    (本書より抜粋:p.151-p.159)
なんとも…。
「噛んで説得」とか「30分だけがまん」とか…。

てっきり、道理がとおらない相手をいかにロジカルに論破するか、その手法が描かれていると期待していました。しかし実際には「論理ではなく、論理以外で勝負しろ」とは…。

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ここで再度考えてみると、「京大式は実践的」と筆者が強調する理由がここにも表れているとも思えます。世の中の全てがロジカルに出来上がっているわけではありません。ましてや、自分も相手もどこまでロジカルに物事を考えられるかすら、分かりません。少なくとも、僕自身が全てのことを論理的に捉え考えることができる、とは言い切れない。
だらから、世の中の全てのことをロジカルにとらえようとしたら、説得できる相手も説得できなくなってしまう。そんなメッセージがこの対処法を本書で描いた筆者の意図として見えてきます。

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そこで、上の4つの対処法から、「相手の道理を推測して、説得を試みよ」をベースに、ベトナムで使えるようにその対処法をアレンジしてみました。
まず前提として、ベトナム人は自分が悪者となることを決して認めません。そして、相手を直接的に非難することも好みません。その時必ず持ち出すのが、僕から見ると”言い訳”じみた架空の悪役です。その悪者は「社会システム」だったり、「文化の違い」だったり、何でもいいのです。その場が丸く収まれば。
ここで見えてくる相手の道理は、自分以外の適当な共通の悪役の存在です。それならば、相手が持ち出す悪役に、のっかってしまう。そして、全てをその悪役のせいにする。最後に、本当に手に入れたい果実は別の切り口からの説得を試みる。
どうでしょうか?tnaru式ロジカルシンキングonly in vietnamです。
残念なことに、この方法では相手を論破とはいきません。そのため、交渉後にスカッとした爽快感も得られそうにもありません。
しかし、本当に手に入れたいものは相手を論破することではなく、相手の手の内にある果実です。そう考えれば、相手が非を認めるように論破することは諦め、一番の果実を取りに行った方が得策と考えた次第です。

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本書を手に取ったのは、ベトナム人の”言い訳”じみた言い分を何とか論破したかったからでした。しかし、実践的な「京大式ロジカルシンキング」が提示した回答は「相手を論破することを諦めよ、そして果実を手に入れよ」と。なんとも実践的すぎるほど、実践的な回答。
ごもっとも!

京大式ロジカルシンキング―頭スッキリ!行動派のための論理思考法 (サンマーク文庫 B- 111)
逢沢 明

京大式ロジカルシンキング―頭スッキリ!行動派のための論理思考法 (サンマーク文庫 B- 111)
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