20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ Tina Seelig
確かに20代で知っておきた。
でも、物事の大切さを理解できるのは20代を終えてからなんだよな。
このギャップが人生を面白くすると思います。
僕はあまり人生指南書のような類は読まない。
理由はいくつかあるけれど、大きな理由は2つほど。一つはなんだか人生にもマニュアルを期待しているようで、ちっぽけな自分になりたくないから。そして、マニュアル自体が著者の小さな成功体験の押し売りに思えてしまうから。
これまで読んだ指南書で心に残っているのは「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」程度です。就職を目前に控え、「社会人になるなら城山三郎氏の本ぐらい読んでおけ」と親父に言われ、同書を手にとりました。(城山氏の著作ではなく、翻訳本になってしまうのですが…。)親父もこんなことを考えているのかなと思いながら読み進めたせいか、同書は今でも心に残る一冊にはなっています。
ただ、それ以外で心に残る人生指南書を探し求めたことすらなかったと思います。
さて、本書「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」は、僕があまり手にしない人生指南書です。これまでであれば手にしなかった本ですが、アメリカの経営者が本書を推薦図書としてあげることが多く、経営者の脳みそを覗き見してみようと、覗き見主義で本書を手にとりました。
読後の感想を先に言うと、経営者の脳みそを覗き見たと同時に、これからの人生で本書のメッセージを意識したいなと感化されてしまいまいした。覗き見主義のつもりが感化されてしまい、ミイラ取りがミイラになるとはこのことかな…。
経営者が推薦するだけあって、本書は「起業家精神とは」というテーマをかなり具体的に展開していきます。起業家精神の意味をより具体的に分かってほしいという経営者の思いから、多くの経営者が本書を推奨するのだと思います。
例えば、「$5を元手に2時間後に何倍まで増やせるか」という課題。実際にスタンフォード大学の筆者の起業家養成講座で実施されたものです。半ば、「明日までに1000万円用意しろ!」といったヤクザの言いがかりにも思えます。
驚きなのは、この講義の出席者の平均収益は20倍で、トップチームは400倍の$2,000にしてしまいます。そして、その次の年からは現金の代わりに「クリップを元手に価値を作り出せ!」というお題に変わります。ヤクザの元締めよりタチが悪いです。
しかしこのヤクザまがいの一連の無理難題が、「起業家精神とは」に対する真の意味と現在の自分の理解度のギャップを浮き彫りにします。仮に「$5を2時間後に400倍にしろ」と言われたら、躊躇なく「できません」と答える自分がいます。「2倍にしろ」と言われても、「分かりました」とは答えられそうもありませ。
「問題が複雑なほどチャンスが転がっている」、そして「その問題を解決できることに、お客はお金を払う」とは本書からの「起業家とは」の回答です。字面では至極当たり前で、本書のみならず誰もが当たり前に強調するメッセージです。しかし、いざ現実に複雑な問題を目の前にすると、自分はどう反応するのだろう?そう考えた時、筆者や経営者が思い描く「起業家精神」とのギャップに気付かされます。
ここで本書のメッセージをもう少し体系だててみると、6つの許可を自分自身に与えなさいとなります。「成功する上で最大の壁は自己規制だ」とは本書のメッセージです。その勝手に自己規制してしまう、特に6つの分野に対して、自分自身が許可を与えなければ成功はないと本書はメッセージを送ります。
【自分へ与える6つの許可】 ・常識を疑う許可 ・世の中を新鮮な目で見る許可 ・実験する許可 ・失敗する許可 ・自分自身で進路を描く許可 ・自分の限界を試す許可 |
どれも一見するとこれまた至極当たり前です。しかし、これらの許可を現実の自分に対して出すとき、時間や金銭というコストを考えると、本書のタイトル「20歳のとき…」という意味をモロに感じます。
失敗といった直接的なコストから、成功や失敗を問わず結果を得るまでに費やす時間と支出まで。「20代だったら上の6つの許可を簡単に出せたのに」そんな安易な結論付けのような感情が本書を読みながら湧いてきました。
しかしより大きく湧いてきた感情は「40代を目前にした僕はこれらの6つの許可を自分自身に与えていいのだろうか?」という疑問と不安です。
この疑問と不安に対して僕自身は「あり」だと思いたいです。別の言い方をすると、本書を20代に対する自分の気持ちの代弁書として読みたくない。それをすることは自分自身のの成長を諦める行為にも感じ、無性に怖くなります。現場の第一線で体を張り続けたい。そんな気持ちの裏返しに近い感情です。
そろそろ20代からは早10年がたち、当時のことは記憶の世界になりつつあります。また、そろそろ自分自身だけでなく、20代にもメッセージを発信するべきか悩むことが増えてきました。
でも、あくまでも自分自身へのメッセージとして本書を読みたい。こんな気持ち分かってもらえますか?
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ Tina Seelig
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