常識をブッタ斬る：【書評】続・反社会学講座

続・反社会学講座 (ちくま文庫)
パオロマッツァリーノ


世間と違う考え方や生き方で、不安な気持をもったことはないだろうか？
世間と違う考え方をしたら、笑われてしまうかも？とか、世間と違う生き方をしたら真面目に生きてないと思われるかも？とか。



僕は今ベトナムに住んでいます。本当だったら日本で会社勤めをすることが、世間一般がいう「今の自分のあるべき姿」だと思います。だから、時々世間一般とずれていることに不安になる自分がいます。
一方で、この世間ってなんだろう？、と思う時もあります。誰か具体的に存在するわけでもない、もしかしたら自分が勝手に存在すると思いこんでいる、非常に曖昧な存在。「お天道様は見ているよ」とばあちゃんがよく言っていました。でも、そのお天道様とも異なる存在。世間って、なんだろう？と。
本書「続・社会学講座」は、この「世間」とか「常識」と思われているものに、ガンガンとつっこみを入れていきます。嗤いと一緒に。

目　次： 第21回 統計奇譚前編・意識調査の闇 第22回 統計奇譚後編・消える住宅の怪 第23回 くよくよのラーメン 第24回 経済学は無慈悲なお約束の女王 第25回 尊敬されたい! 第26回 シェフの気まぐれ社会調査 第27回 賞マスト・ゴー・オン ツッパることは勲章か 第28回 末は博士か叙勲者かPART1・名誉博士への異常な愛情 第29回 末は博士か叙勲者かPART2・賞より素敵な商売はない 第30回 こどもが嫌いなオトナのための鎮魂曲 新作落語『長屋武士道』 コント『あなたにもビジネス書が書ける』

本書の目次は第21回から始まっています。しかしそれは決して間違っているわけではありません。本書は「反社会学講座 」の続編なので第２１回からのスタートになっています。
僕自身は第１回から始まる「反社会学講座」を読んでいませんが、筆者の過去の作品から、同書も期待が持てそうな感じがします。
蛇足ですが、筆者パオロ・マッツァリーノ氏の「つっこみ力 」も読みましたが、本書の方が切れ味がさえていました。

さて、本書については、そのオビが全てを語っています。これほど簡潔かつ的確に的確に表現したオビの一言もないでしょう。

「学問で笑え。学問を嗤え。」

「つまらない学問は罪である」を信条とする筆者パオロ・マッツアリーニ氏。ユーモアあふれるツッコミを入れながら、本書も世間常識と思われるものを、つっこみで笑いと嗤いに変えていきます。「常識を疑い、ステレオタイプをウイットに富んだつっこみでぶった斬る」。僕の本書を読み終わった時の率直な感想です。
例えば、「少年犯罪は凶暴化している」とか、「若年層よりも老年層が心の豊かさを求める」とか…。どれもがステレオタイプ的に「そうだ」と思われがちな事柄です。
本書は、これらの調査を徹底的に洗い直し、その調査方法のいい加減さをや、結論ありきで進む論調に片っ端からつっこみを入れます。
また、「武士道は江戸時代にもあったのか？」とか「『こだわり』ってプラスの意味の言葉か？」など、まさに世間的に「そうだ」と思われている事柄にも疑問をぶつけます。現代では当たり前と思いこんでしまっていることが、筆者のつっこみでどんどんと崩れ落ちていきます。
本書を読み進めていくと「『世間一般』って、こんなにアヤフヤで、曖昧で、移り気なのか？」という感覚が芽生えてきます。合わせて、自分が勝手に世間という存在を作り出しているのかもしれないという意識が芽生えます。
「まさに、そうだ！」と、本書一冊でそこまでの結論づけてしまうと、これまた短絡的なステレオタイプになってしまう恐れもあるのですが…。

ところで、筆者のパオロマッツァリーノ氏は存在自体が謎に包まれています。本書のプロフィールではイタリア人で、現在千葉県在住の３０代。イタリアン大学法経学部卒業とか。以前、筆者パオロ・マッツァリーノ氏のブログに掲載されていたプロフィールは、今はなくなっているし…。
しかし、このふざけた（？）プロフィールとは裏腹に、プロのニオイがプンプンします。少なくとも、素人の戯言ではない何かを本書から感じます。
世間に押しつぶされそうになった時、本書が少し支えてくれます。嗤いと一緒に。

続・反社会学講座 (ちくま文庫)
パオロマッツァリーノ


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