2012年1月15日日曜日

そもそも論で語る:【書評】-哲学的な何か、あと科学とか


哲学的な何か、あと科学とか
飲茶
4576061844

「そいうことか!」と、読みながら連発した本。
本書によって、科学本とか哲学本への興味が沸いた僕にとって貴重な一冊。


出てくる、出てくる。
昔、教科書でみたけど、難しすぎて、理解できなかった用語の数々。その後、心新たに挑戦したけど、やっぱり分からず、理解することを諦めた用語の数々。最後は「解説者よ。本気で解説する気あるのか!」と逆ギレ状態だった用語の数々。
僕は、科学理論を理解することは自分には一生無理なんだと、諦めていました。これが自分自身の中でコンプレックスで、寂しい気持ちでした。知りたいと思ったことを、誰かは知っているのに、自分の脳ミソが追いつかず理解できないのかと。

イタリア・ロッシダシアーゴ社 グラッパ【帆船球/Mondo Legno con Veliero】大きな地球儀のデキャンタ

ここで見て欲しいのが本書の目次に並ぶ用語の数々。これまで僕が理解することを諦めていた用語の一覧表(ほんの一部)とほぼ同義語です
逆に、これらの用語を分かって発言している人に会うと、コンプレックスから、物事を分かって発言しているんだなと妙に感心している自分がいます。
はじめに
1章 哲学的な何か
不完全性定理
公理①
公理② ルイス・キャロルのパラドックス
我思う、ゆえに我在り
論理①
矛盾
論理② 言語ゲーム
イデア論
物質
道具主義
原理的に不可能

2章 あと科学とか
相対性理論
カオス理論
エントロピー増大の法則①
エントロピー増大の法則②
ボルツマン
散逸構造論①
散逸構造論②
散逸構造論③
不確定性原理

3章 量子力学とか
波動と粒子の2重性
波派VS粒子派の戦い①
波派VS粒子派の戦い②
波派VS粒子派の戦い③
2重スリット実験①
2重スリット実験②
2重スリット実験③
2重スリット実験④
2重スリット実験⑤
コペンハーゲン解釈
2重スリット実験の哲学的解釈
シュレディンガーの猫①
シュレディンガーの猫② よくある疑問A
シュレディンガーの猫③ よくある疑問B
抽象的自我
多世界解釈
多世界解釈の問題①
多世界解釈の問題②
多世界解釈の問題③
多世界解釈の問題 完結編
パイロット解釈
パイロット解釈の問題
解釈問題
4章 科学哲学史とか
帰納主義
帰納主義の問題
論理実証主義
論理実証主義の問題
反証主義
反証主義の問題
ポパーの決断

5章 もっと哲学的な何か
人工知能の心
チューリングテスト
思考実験① 双子のクローン赤ちゃん
クオリア①
クオリア②
クオリア③
思考実験② どこでもドア
ゾンビ問題
自由意志
思考実験③ どこでもドア2
脳分割問題①
脳分割問題②
脳分割問題③
思考実験④

あとがき
参考文献






イタリア・ロッシダシアーゴ社 グラッパ【帆船球/Mondo Legno con Veliero】大きな地球儀のデキャンタ

本書を読んでいて感じることは、筆者飲茶氏の哲学や科学に対する愛です。飲茶氏は本当に科学や哲学が好きなんだなと。このあたりは飲茶氏のブログからも感じられる部分です。だから、その問題を腹の底から理解して、「そもそも○○ってこう言うことだ」と書けるのだと思います。
そして、僕が求めていたのもこの「そもそも」論。これまで数式や難しい用語を使った解説は、あらゆるところで目にしてきました。でも、その解説を読むための解説を探さなければ、解説すら読めない始末です。だから、この「そもそも」論を求めていました。
絶対に間違えが許されない解説者心理から、厳密な解説をしようとするのは分かります。でも、それがためなのか、既存の解説に少し手を加えるだけで誤魔化した解説が多すぎるように思えます。結局、どの解説者も「そもそも」論を展開できない。
この点、「そもそも」論を展開してくれる本書は、本当にありがたい存在です。しかも、数式とか難しい用語は本書で一度も出てきません。筆者の飲茶氏が腹の底から理解したことを筆者の言葉で語っていきます。だから、本書は分かりやすいんだと思います。
高校入学以来、数学や科学の教科書を開くことを辞めた僕が、相対性理論とか、エントロピー増大の法則とか、量子力学がどんなものか、触りだけでも知ることができるとは思っていませんでした。

イタリア・ロッシダシアーゴ社 グラッパ【帆船球/Mondo Legno con Veliero】大きな地球儀のデキャンタ

ところで、新しい情報や知識の吸収は僕にとって読書という点では、あくまでもおまけの存在です。それ以上に大切にしているのが、思考力を磨くという部分です。
この点、これまで曖昧な理解で済ませてきた思考方法のお約束事も含め、改めて考えさせられました。公理とか定理といった言葉の意味。帰納主義から論理実証主義、そして反証主義へと移り変わる科学哲学史の流れなど。
特に、これまでの科学者や哲学者が何をどのように考えてきたのか。その背景まで含め、時系列で平易な言葉で解説してくれる本書は思考力アップには格好の素材です。偉大な科学者や哲学者に、それはひねくれすぎだろう!と思わずツッコミを入れてみたり、なるほどと感心してみたり。
本書は過去諦めた分野に再度足を踏み入れることを助けてくれた書。少し大げさにいえば、僕にとってそんな本になります。

イタリア・ロッシダシアーゴ社 グラッパ【帆船球/Mondo Legno con Veliero】大きな地球儀のデキャンタ

蛇足ですが、飲茶氏は哲学好きなどが高じて脱サラ、現在は会社経営をしているようです
破天荒に見えるけど、自分の生き方を追求しようとする筆者の真摯な生きたかにもシンパシーを感じます。「そもそも、お前はなんでベトナムに来たんだっけ?」と自分自身への問いかけが頭をかすめながら。

哲学的な何か、あと科学とか
飲茶

哲学的な何か、あと科学とか
史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK) 哲学的な何か、あと数学とか フェルマーの最終定理 (新潮文庫) 玩具修理者 (角川ホラー文庫) 時間は実在するか (講談社現代新書) by G-Tools

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