アングロサクソンになれる人が成功する―なぜ彼らのビジネススタイルが最強なのか (PHP文庫)
アングロサクソン型は強者の理論。一方、終身雇用型の日本は弱者配慮の論理。
ついつい、そんな風に思ってしまう。でも、本当だろうか?
本書はある友人に勧められて読んだ本。彼の選書は秀逸で、自分が関心を持ちながらも手にしたことがない書籍が含まれています。本書もその中の一冊です。
目 次 第Ⅰ部 アングロサクソン型人間とは何か 第1章:この目で見たアングロサクソン型人間の真実 第2章:全てのきっかけは金融ビックバン 第3章:かくして人材ビックバンがはじまる 第Ⅱ部 アングロサクソン型組織とは何か第4章:アングロサクソン型組織の仕組み 第5章:究極の相互評価「360度人事評価システム」 第6章:「目的集団」をつくりあげる研修の秘密 第Ⅲ部 アングロサクソン人間になるための条件第7章:自分の意見を「発言」できて一人前 第8章:会社が消えたとき、クビになるとき 第9章:さあ、アングロサクソン人間になろう 終 章 日本人には向かないという誤解を解くために |
本書のオビ「解説 森永卓郎」という文字。本書を手に取った時に、真っ先に目が言った部分です。森永氏と言えば、アングロサクソン型反対論者の急先鋒かと。その森永氏に本書の解説を依頼する同書の姿勢に、興味を掻き立てられ、思わず一気に読了してしまったのが本書です。(平たくいうと、著者と出版社の術中に完全にはまった…。)
アングロサクソン型を提唱する本書の主張は「強者による、強者の論理」と受け取られるかもしれません。当然、同書はアングロサクソン型を支持し、弱肉強食を当たり前とし、勝者であることを求めます。
しかし本書が強調するのは、アングロサクソン型には血も涙もあるということ。決して、アングロサクソン型とは「強者による、強者の論理」ではないと、本書を読んで改めて感じました。
ところで日本の終身雇用が本当に「弱者配慮型」のシステムなのか僕は疑問を持っています。一度正社員となれば一生正社員で、大学卒業と同時に入社したプロパー人材のみが昇進するシステム。
どうしても、「一度失敗したら、人生一生負け」のシステムに思えて仕方ありません。さらには、誰もが正社員となることを希望してしまう社会の風潮。
なんだか、自分の人生は正社員となり会社で出世するためにあると言われているようで。終身雇用をあまり好きになれません。
といって、僕自身は決して強者ではありません。正社員でもなければ、当然、昇進なんてのも経験したことがありません。一番の自分の強みは「未だ贅沢を経験したことがないから、捨てる物がないこと」。これを半ば自嘲的気に、半ば本気で思っているぐらいです。
そんな僕が強者の論理と言われるアングロサクソン型に心がなびきます。その理由はアングロサクソン型に、血も涙もあることを感じるから。
アングロサクソン型の血と涙を示唆する部分は本書にもあります。筆者が従業員をクビにする著者の実体験です。筆者は本書の中で、会社の業績不振を理由に解雇した一人の秘書と、能力不足の点から解雇した副社長一人のケースを書いています。
本書によると解雇はアングロサクソン型社会で育ったアメリカ人にとっても、心理的ダメージは相当なもののようです。しかし、仮にクビとなっても、再起可能なチャンスが一方では広がっているのがアングロサクソン型社会です。必然と、これまでと同等の待遇を受ける機会もあることになります。実際に筆者がクビにした人間も同等の待遇を受け転職が決まったと書かれています。
これが終身雇用を前提とする日本ではどうなっていたのだろう?「能力がない、失敗者」の烙印が押され、下手をすると再起不能まで追い込まれます。少なくとも、これまでと同等の待遇を受けることは非常に難しくなるでしょう。
この部分に、僕は日本の終身雇用システムの冷たさを感じてしまいます。システムに乗ってしまえば非常にありがたい環境ですが、一度そのシステムから離れてしまうと、もう決してその恩恵に与ることはできないシステム。ここに何とも言えない冷たさを感じてしまうのです。
余談ですが、僕もベトナムで3人のベトナム人をクビにした経験があります。終身雇用の国で育った人間が誰かをクビにするという現実に、もの凄く心の葛藤がありました。未だに自分の無能さをクビにした3人に押しつけてしまったという感覚が拭いきれません。唯一の救いはベトナムも終身雇用型ではなく、アングロサクソン型の労働市場だということです。3人とも、同等程度の待遇で別の会社へ転職ができました。
アングロサクソン型が果たして著者がいうほどいいものなのかわかりません。ただ、著者が指摘するアングロサクソン型のいい部分として、「敗者復活可能である」ことはもっと注目されていいのではないかと思います。
敗者復活戦があれば、もっと大胆な行動を取ることができ、自分の人生の選択肢も増えてくるように思います。
ということで、人生は強者とか敗者ではなく、人生を楽しみたいと思う人が読むと、「アングロサクソン型も悪くない」と思える一冊です。
アングロサクソンになれる人が成功する―なぜ彼らのビジネススタイルが最強なのか (PHP文庫)
糸瀬 茂
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