2012年1月6日金曜日

儲かる国予想:【書評】世界不況を生き抜く新・企業戦略

世界不況を生き抜く新・企業戦略 (朝日新書)
世界不況を生き抜く新・企業戦略 (朝日新書)
最近、TVに出始め有名になってしまった、門倉氏の書籍。
これから儲けるなら、この国!という予想本。


今でこそ若干、色もの(?)的な扱いをされている門倉氏。その元は2006年にBRICsに次ぐ新興国を「VISTA」などと造語を発表し、注目を集めました。
そんな門倉氏が2009年に執筆したのが本書。これからの日本企業は日本に留まっていていはいけない。そして、「進出するなら、これらの国々」という主旨で書かれたのが本書です。
本書が今後成長が予想される国として取り上げるのは、4地域の合計10カ国。以下の図のようになります。
今後成長が予想される10カ国
VISTA5カ国(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)に加え、新たに5カ国が追加されています。
BRICsに含まれるインドとブラジルを除けば、門倉氏の独自予想はVISTA5カ国と新規3カ国(ナイジェリア、エジプトとイラン)の計8カ国です。
atmosphere 地球儀 Vision(シルバー&グリーン:アルミニウムベース)
ところで、これらの国々の実質経済成長率を見ると、こんな感じです(インドとブラジルを除く)。2011年は8カ国中で3カ国が、いわゆる成長国の称号を確保できる成長率5%を下回りました。
[世] 実質経済成長率の推移(1980~2011年)の比較(アルゼンチン、トルコ、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、イラン)
参考までに、下回ったのは南アフリカ(3.40%)、エジプト(1.22%)、イラン(2.52%)の3カ国です。
この3カ国のうち、2011年のエジプト民主革命などは誰も予想がつかなかったでしょう。このエジプトを除くと9カ国中7ヶ国が2011年も5%以上の経済成長を記録したことになります。結構高い正当率として、評価していいのではと思います。
atmosphere 地球儀 Vision(シルバー&グリーン:アルミニウムベース)
本書は別で成長が予想される国を知ることもできます。この分析から浮き上がってきた国が、アフリカ北西に位置するマグレブ諸国。これまで僕の中では完全にノーマークの国々でした。
このマグレブ諸国とはアルジェリア、リビア、モーリタニア、モロッコとチュニジアの合わせて5カ国を示す総称です(左の地図の青の部分)
今後はEUのような地域経済圏の創出も視野に入れたマグレブ連合を創設し、これら5カ国は経済連携を深めています。
本書によると、この地域にドイツを中心とした欧州企業やブラジルの企業などが大挙押し寄せており、今後の成長がすこぶる見込める地域だそうです。
この地域に筆者が注目する理由はアフリカ大陸最大と言われる原油と天然ガスの埋蔵量。さらには、同地域で積極的に進められている大型社会インフラ開発プロジェクトです。本書ではモロッコの高速鉄道計画と、アルジェリアの高速道路プロジェクトを紹介しています。
でも、運命のいたずらなのか、何かの陰謀か?執筆当時は予想もつかなかったと思いますが、リビアでは民主革命が起こり、現在同国はリハビリ中。すぐお隣のエジプトにも民主革命の流れが本格化したこともあり、他のマグレブ諸国にも民主革命が起こる可能性が高まっています。インフラプロジェクトの受注という短期的な企業活動の点からは、その魅力は下がったといっていいでしょう。
さらに2011年にマグレブ諸国へ追い打ちをかけたのはEUの経済危機。ドイツ企業を中心とした欧州企業が進出の中心だったことから、進出熱が下がることも予想されます。国の経済力という点では、外資の流出が予想され、これまでどおりの経済成長は見込めなくなる可能性があります。ただ、既存のプレーヤーの入れ替えの可能性が出てきたという点では、日系企業へのチャンスが訪れたとも読みとれますが。
atmosphere 地球儀 Vision(シルバー&グリーン:アルミニウムベース)
最後に、ベトナムはポテンシャルが高い成長国として、本書にも紹介されています。筆者の斬新な視点は、2009年当時から、ベトナム国内消費市場の魅力に踏み込んだ点です。
2009年のベトナムは、まだ人件費の安さが魅力の「製造拠点」であり、「国内消費市場」としては、さほど注目されていませんでした(JETROの「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」)。そんな中、国内小売市場の統計数値に注目した点は流石だなと思います。VISTAとしてベトナムを取り上げた以降も、依然アンテナを貼っている様子がうかがえた点です。
atmosphere 地球儀 Vision(シルバー&グリーン:アルミニウムベース)
ということで、本書はこれから成長が予想される国と産業を新書にまとめて発表しています。カバーする地域も、アジアに始まり、アフリカ、中東、中南米と、いわゆる新興国地域全体から、成長国予想を展開します。まず、どの国を攻めるか?と考える最初の1冊として、重宝しそうです。
ところで、本書が海外進出を促すために強調した、「アジア経済倍増計画」はどこへ行ってしまったのだろう?麻生内閣が2009年にぶち上げた構想のようだが、麻生内閣とともにどこかへ消えてしまったのだろうか?


世界不況を生き抜く新・企業戦略 (朝日新書) 世界不況を生き抜く新・企業戦略 (朝日新書)
門倉 貴史

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